2022/5/16

鈴木慶樹先生の思い出1

鈴木先生は患者に媚びることのない、厳しい先生でした。
或る時、石油販売大手の会社の会長さんから治療依頼の申し出があったそうですが、「態度が横柄だ。」といって断ってしまったそうです。その会社の系列のガソリンスタンドの経営者の方が、「会長といえば、わたしらにとっては雲の上の人ですよ。それを断ってしまったんですか?」と驚いていたそうです。
大会社や大銀行の社長であれ、重役であれ、少しでも態度が悪いとみなせば遠慮なく断るという姿勢でした。特に、秘書を通じて電話をよこすことには「自分の健康のことを秘書任せにするなどもってのほかだ。」ということでした。
また、ある時は、都知事になる前の石原慎太郎氏から、治療依頼の電話があったそうですが、「私は、あなたのような人間は嫌いだ。」と言って、断ったという話を聞かせてもらいました。
この場合は、先生の個人的な考えが主な理由だったでしょうが、とにかく、相手がどんな社会的な地位の人かに関係なく、ご自分の信念を貫くという点で稀にみるお方であると感じました。
また、このご自分の信念を貫くという点では、次のような話を聞かせてもらったことを覚えています。
あるとき、小さい男の子を伴って治療に来ていたおばあちゃまを治療中に、その子が何かいたずらをしたのを見て、先生が「そんなことをしてはいかん。」と注意したら、その子が「へへ!」と言って無視するような態度をとったので、先生がその子を診察台の上に引っ張り上げ、その子のお尻を剝き出しにして数回思い切りひっぱたいてやったそうです。その子はひーひーと大泣きし、傍で見ていたおばあちゃまは、「○○ちゃん、早くごめんなさいを言いなさい。」とおろおろするばかりであったそうです。
先生は、暴力的な体罰を与えたということで訴えられたら、構わん、進んで監獄に入ってやるとおっしゃっていました。
しかし、その後何日かして、その子のおじいちゃまが訪ねてきて、「先日はわがままな孫に大そう有意義なお仕置きをしていただき、誠にありがとうございました。」と丁重に挨拶されたそうです。
先生は、今の時代にはまことに珍しい信念のお方であったと思います。